“コトバ”が一番難しい。
入社して以来、ずっと思い続けていることだ。
入社してすぐの頃
毎日のように言葉に対するフィードバックを受けた。
「誰にでも書ける」と思いきや
大きな構造から細かな文章表現まで、
ダメだしを貰い続ける日々。
つまづいてばかりだった。
言葉は、ごまかしが効かない。
どんなに美しい見た目で着飾ったとしても
言葉が成立しなければ、人の心には届かない。
そのことに漠然と気がつきながらも
どうすればそんな言葉を生み出せるか
答えは見つかっていなかった。
そんなある日に任されたのは、
サイトのトップに表示するキャッチコピー。
サービスの顔になる部分だ。
お客様からは「こういうサイトにしたい」「こういう点をアピールしたい」
という要望は上がっていた。
一見、ゴールがはっきりしているように思えたが
書き出してみると納得のいくコピーにならない。
お客様の発言のメモを何度も読み直す日々。
同じところをぐるぐると回る感覚から抜け出せなかった。
ある時「ユーザーはどう考えているんだろう?」と、ふと思った。
今まで、「作り手」の目線で考えていたけれど
「受け取り手」の目線を意識していなかった。
それまでに積み上げた案を読み返すと
独りよがりのものばかりだったことに気づいた。
その日から、書く時間よりも
対象のユーザーの声を集め
読み漁る時間に多くを費やした。
ユーザーの生の声に触れて
今までいかに狭い範囲で
言葉を考えていたかを思い知った。
これまでの苦しみが嘘のように
新しい切り口が次々と浮かんできた。
そうして作り上げたアイデアは、お客様にも伝わった。
「すごく好きです」「新しい視点をいただきました」
という言葉をいただいたときは
本当に嬉しかった。
言葉の力で、サイトとユーザーの架け橋になれた。
“コトバのデザイン”ができた、はじめての経験だった。
その仕事は、今でも心に残っている。
人の気持ちに寄り添うことを忘れず
言葉をデザインする人であり続けたい。